院長コラム 

だいとうレディースクリニック

閉経後骨粗鬆症と女性ホルモン
はじめに
 女性ホルモンは、女性の健康に深く関与していることが知られていますが、女性は閉経を迎えると、卵巣の働きが低下して女性ホルモンが急に少なくなります。そのため、更年期障害、膣炎、頻尿、高脂血症、乾燥肌などの症状が現れます。さらに、女性ホルモン、特にエストロゲンは骨を守る働きがありますが、閉経後はエストロゲンの低下により骨の吸収が高まり、急速に骨量が減少します。閉経後骨粗鬆症とは、女性ホルモンの低下と加齢により骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。閉経期以降の女性4人に1人が骨粗鬆症であると言われています。

診断
 骨粗鬆症の診断には骨量の測定が必要です。原則として、腰椎の骨密度を測定し、若い人(20~44歳)の骨密度(YAM)と比較して、70%未満であれば骨粗鬆症と診断されます。閉経後は、年齢相当でも骨量が減少していることになりますので注意が必要です。
 最近では、尿検査、血液検査で今どの程度、骨が吸収されているか判断することができます。

治療薬
 骨量を増加させる薬として以前はエストロゲンと注射剤のカルシトニンのみでしたが、最近では強力な骨吸収抑制剤であるビスフォスフォネートや、骨にはエストロゲンとして働くラロキシフェンが出てきました。
 その他に骨量の増加は少ないですが骨質の改善として、ビタミンK,D3が用いられます。

ホルモン療法 
 エストロゲンは女性の若さを保つホルモンとして、1960年代より導入されました。その後、エストロゲンだけでは子宮内膜がんが増加することが分かり、現在は黄体ホルモンと併用することで内膜がんの発生を防いでいます(ホルモン補充療法)。更年期障害、頻尿、膣炎などの泌尿生殖器症状を伴った方であれば、骨粗鬆症の治療としてホルモン補充療法が第一選択になります。
 閉経後、早期にホルモン療法を始めると心筋梗塞などの冠動脈疾患も減少しますが、動脈硬化のある70歳以上から始めると逆に増加します。その他の注意点としては乳がんと静脈血栓症があります。乳がん、喫煙、血栓症の既往がある方などはホルモン療法ではなく他の薬剤が適しています。
 エストロゲン剤にも飲み薬、貼り薬など種類があり、それぞれに特徴があります。さらに、投与量による効果の違いもありますので、ホルモン濃度、症状の改善度などを考慮し、投与量を決める必要があります。

 注意すべき点
 骨量は年齢平均との比較ではなく20歳から44歳の平均値と比較する。 骨量は腰椎のDXA法が最も鋭敏です。


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