院長コラム 

生理不順1  多嚢胞性卵巣症候群(タノウホウセイランソウショウコウグン)
 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome ;PCOS)とは月経の異常、不妊を訴える方に多い病気です。
 毎月選ばれるべき卵が選ばれず、排卵しないため、卵巣の中に小さな卵がたくさん溜まったような状態になっています。月経異常にもいろいろな程度があり、ひどくなれば、月経のまったく無い方もいます。その他の症状としては、多毛、肥満などがあります。

 診断にはホルモン検査と超音波検査が必要です。

 治療は妊娠を希望している場合と希望していない場合にわけて考えます。

 妊娠を希望している場合は排卵誘発剤を用います。普通は飲み薬からはじめて、効果が無ければ注射になります。卵巣が非常に大きくなりお腹に水が溜まるような副作用もありますので注意が必要です。薬が適当でない場合には腹腔鏡を使って卵巣に穴を開ける手術を行います。

 妊娠をまだ希望しない場合はホルモン剤を用いて生理不順を改善します。
不順のまま放置すると卵巣の働きがより以上に悪化し、いざという場合困ることがありますので注意が必要です。

生理不順2  高プロラクチン血症
 プロラクチンとは乳汁分泌をつかさどるホルモンで、頭の中の下垂体から出ています。プロラクチンが高いと卵巣の働き(卵胞発育、排卵)が抑えられ生理不順になります。

 プロラクチンが高くなる原因としては、薬(安定剤、胃薬など)、脳腫瘍(プロラクチノーマなど)、甲状腺機能低下などがありますが、原因の無い場合がほとんどです。

 明らかな腫瘍がある場合は脳外科手術が行われます。原因薬剤があれば中止あるいは変更します。
 原因の明らかではない場合にはドーパミン作動薬を用いてプロラクチンを低下させます。最近は週1回の服用ですむカバサールが用いられます。

尖圭コンジローマに新しい治療法
尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(イボのウイルス)の感染が原因で発症します。パートナーとの感染が問題になりますので早めに治療する必要があります。

 今までの治療法としては電気メスによる焼灼、液体窒素による冷凍凝固などの外科的治療が主でした。薬物としては抗がん剤を使用することもありますが保険診療外になります。

 今回、尖圭コンジローマ治療薬としてイミキモド クリームが保険適応になりました。サイトカイン(インターフェロンなど)を誘導してウイルスをやっつける作用があります。使用方法に注意が必要ですが、新しい治療として選択肢が増えました。

ヘルペス感染
 性器ヘルペス(GH)は単純ヘルペスウイルスの感染によって浅い潰瘍、水疱ができる病気です。
 はじめての場合(初感染)は水疱から潰瘍となり、1週間目に非常に症状が重くなり、激しい痛み、リンパ節の腫れ、おりもの、発熱があり、歩けない、おしっこができないという状態になります。感染しても症状のでないこともあります。
 一度感染すると何度も症状が繰り返す場合があります(再発、回帰発症)。体調の悪いときに、神経にすみついたウイルスが暴れだすためです。症状は軽く、早く治りますが、パートナーに感染する可能性がありますので注意が必要です。
 治療はアシクロビル1日5回またはバラシクロビル(バルトレックス)2回5日間内服。重症例ではアシクロビルの点滴静注。
 再発を繰り返す場合(年6回以上)、以前は苦肉の策としてアシクロビルを少量、持続的に服用という方法を行っていました。最近、バラシクロビル1日1回、1年間服用が保険適応になっています。

クラミジア感染症
 性行為感染症のなかでクラミジア感染が増加しています。淋病などと違って、あまり症状がありませんが、おりもの、少量の出血、腹痛などがあれば要注意です。場合によっては、ひどい腹膜炎をおこすこともあります。

 クラミジアは普通の細菌と違って細胞の中に住み着いて長く感染が続きます。昔はトラコーマといって目の病気の原因として非常に頻度の高く、失明の原因の第1位でした。最近は子宮頚管炎、卵管炎が多くみられます。クラミジアの感染をくりかえすと卵管(卵を運ぶ管)がその周囲とくっついて不妊症になります。

 普通の抗生剤は効果がありません。マクロライド系、テトラサイクリン系が効果的です。当院ではジスロマックSR1回服用がお勧めしています。