院長コラム 

淋菌感染症
 最近、淋菌による感染症が目立ちます。淋菌は通常、ヒトからヒトへ、主に性行為によって感染します(性行為感染)。

 尿道炎、咽頭炎、結膜炎などは痛み、膿などの症状がでます。女性の場合、子宮に感染(子宮頸管炎)しただけではあまり症状はなく、おりものがある程度ですので注意が必要です。

 検査は培養法、PCR法などが行われます。最近、クラミジアと同時に検査することができることになりました。

 治療は抗生剤の注射または内服になります。抗生剤の効かない耐性菌が増えています。内服薬では効果のないことも多く、治療の後、必ず検査を行う必要があります。
 腹痛が出るような場合(骨盤内の炎症)には子供ができにくくなる事がありますので早めに充分な治療が必要です。

膣炎
 子宮とは違って、膣の中には常に細菌がすんでいます(子宮の中は無菌)。しかし、デーデルライン膣桿菌という乳酸菌の働きによって膣内は酸性に保たれ、他の細菌が繁殖しないようになっています。このような働きを膣の自浄作用と呼びます。
 膣の自浄作用は卵巣からのホルモンによって活発になります。ですから生理不順があれば膣の炎症を起こしやすくなります。もちろん閉経後も膣炎が多くなります(萎縮性膣炎)。膣炎の予防には生理が順調であることが大切です。閉経後の方にはホルモン療法がお勧めです。
 膣炎には普通の細菌以外にも淋菌、カンジダ(カビ)、トリコモナス(虫)、ヘルペス(ウイルス)などが原因のこともあります。症状、治療法もそれぞれ異なりますので診察を受けてください。
禁煙外来
禁煙外来を開始しました。

当院の主な治療のホルモン補充療法、さらにピルなどは喫煙者には不適当とされています。たとえば、35歳以上で一日15本以上喫煙している方は血栓症などのリスクが高く、ピルの適応とはなりません。

当院でも喫煙のリスクについて説明し禁煙指導を行ってまいりました。しかし、ニコチン依存症の方はなかなか禁煙が困難で、ニコチンの補助療法が必要でした。以前はニコチン製剤はすべて自費でしたのでタバコ代よりはかなり高額な費用が必要でした。

現在、ニコチンの補充療法にかえてチャンピックスという飲み薬で禁煙を行っています。煙草を吸っても吸った気にならず、吸いたい気持ちも抑える優れものです。ニコチンパッチに比べ禁煙成功率も非常に高くなっています。

気楽に禁煙に挑戦しましょう。

風邪の漢方治療
インフルエンザ(流行性感冒)には抗ウイルス薬であるタミフル、リレンザなどが有効ですが、いわゆる感冒(風邪)に対する特効薬はありません。通常の風邪薬は症状を抑える対症療法であり、安静、保温、水分補給などが大切です。漢方薬は風邪にたいへん有効で非常にたくさん種類があります。それぞれの症状、体質、時間的な経過にあわせて漢方薬が選ばれます。
 風邪のひきはじめには葛根湯が有名ですが、その他に麻黄湯、小青竜湯、桂枝湯、麻黄附子細辛湯などがあります。すこし漢方の風邪薬について紹介します。

風邪の初期(急性期)

葛根湯(カッコントウ) 
 発熱、頭痛、肩こり、悪寒などがあり、汗はなく、胃腸のつよい体力のある方。肩から上の症状。

麻黄湯(マオウトウ)
 発熱、頭痛、悪寒、腰痛、関節痛などがあり、汗はなく、胃腸のつよい体力のある方。肩から下の症状。

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
 くしゃみ、鼻水、鼻閉、咳、息苦しさ、水ぽい痰などがあり、やや体力のある方。

桂枝湯(ケイシトウ)
 体力のあまり無い方で、風邪の初期症状があり、少し汗が出ている方。服薬後、あたたかい飲み物、おかゆなどがお勧め。

桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)
 桂枝湯と麻黄湯の合剤。のどの痛み、咳、皮膚のかゆみがある場合。
 
麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)
 体力のあまり無い方で、寒けが強い場合。微熱、頭痛、咳、鼻水、手足の冷えと痛みなどがあることも。年配の方や気力がないような時。

風邪の亜急性期以降(少し時間が経過した時期)

柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
 数日が経過しても頭痛、悪寒、関節痛、食欲不振などがある場合。桂枝湯の症状と消化器症状がある方に効果的。

小柴胡湯(ショウサイコトウ)
 食欲不振、口が苦いなどの消化器症状があり、全身倦怠感、微熱などが残っている方に。

竹ジョウ温胆湯(チクジョウウンタントウ)
 痰を伴う咳がすっきりせず、不眠、精神不安、神経過敏、食欲不振などを伴う場合に効果的。

麦門冬湯(バクモンドウトウ)
 乾燥した感じで、粘調な痰が切れにくく、急に咳が出てとまらない場合。気道をうるおす効果があり、妊婦さんの咳におすすめ。

さらに症状が慢性化した場合
 補中益気湯、人参養栄湯、柴胡桂枝乾姜湯など。

風邪の初期で症状があまりひどくない場合
 のどが痛くて他にあまり症状がないときに 桔梗湯(甘い)。
 気が滅入るときに 香蘇散(紫蘇が含まれ、飲みやすい)。
 頭痛を伴うときには 川キュウ茶調散(風邪の後の頭痛にも効果あり)。
 
冷え症の漢方療法
手足の冷え
 体より手足の冷えが強く、上半身ののぼせを伴うこともある場合。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
 体の中に冷えがあり(お腹の冷え)、手足が特に冷えている方に
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
 ややキャシャな方にお勧め。生理痛、むくみ、めまい、動悸、倦怠感など があれば効果的。最も一般的に使用されています。
加味逍遙散(カミショウヨウサン)
 いらいらなどの精神神経症状を伴う方に
桂枝ブク苓丸(ケイシブクリョウガン)
 冷えのぼせがあり、やや便秘がちの方に
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
 冷えのぼせがあり、体力のある便秘の方に

下半身の冷え

五積散(ゴシャクサン)
 臍から上はのぼせ、下は冷え、頭痛、嘔気などがある方に
八味地黄丸(ハチミジオウガン)
 特に下半身の冷えで、やや高齢の方に

全身の冷え

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
 食欲が無く、手足の倦怠感があり体力の低下を感じる方に
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
 補中益気湯の症状と貧血様の症状がある方に
真武湯(シンブトウ)
 さらに体力が無く、新陳代謝が低下している方に