院長コラム 

ピルのいいとこ(副効用)
 ピルと呼ばれているいわゆる経口避妊薬は非常に高い避妊効果がありますが、その他にいろいろな効用が知られています。少し紹介させていただきます。

1.生理不順が解消する。

 毎月28日周期で予定通り月経になります。
 予定月経を移動させることも可能です。

2.生理痛が軽くなる。

 生理痛(月経困難症)の原因としては子宮筋腫、子宮内膜症などの病気による場合と子宮には特に病気のない場合がありますが、ピルを服用すると生理痛が軽くなります。特に原因のない場合は有効です。

3.生理の量が少なくなる。 

 ピルを飲むと、自然の生理とは違った、消退出血という生理となり出血の量が少なくなります。貧血も改善します。

4.生理前の不快な症状がなくなる。

 生理のまえに、お腹の張り、乳房の痛み、便秘、気分の落ち込み、いらいら、めまいなど不快な症状がでます。これらは月経前症候群(PMS)あるいは月経前緊張症などと呼ばれる症状で、排卵後の増加する黄体ホルモンによるものです。ピルにも黄体ホルモンは含まれていますが、ホルモンの変動をおさえることによって、PMSが改善されます。

5.にきびが無くなり、肌がきれいになる。

 にきび、多毛などはからだの中にある男性ホルモンの作用による症状です。人によって効果は異なりますが、男性ホルモン作用の少ないピルほど肌がきれいになるかもしれません(ピルの種類によって差があります)。

 その他に、卵巣のう腫、卵巣がん、子宮体がん、大腸がんになりにくくなる効果などもありますが、ピルには利点ばかりあるわけではありません。ピルが適当でない方(喫煙 、ホルモン依存性腫瘍、血栓塞栓症、年齢)もいますので主治医の先生に相談してください。


子宮がん検診
子宮がんには子宮頸がんと子宮体がんの2種類があります。
子宮がん検診といえば通常、子宮頸がん検診のことです。

子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、主に扁平上皮がん(皮膚のがんと同じ)です。検査としては簡単に細胞の検査(細胞診)が行えるので、早期発見が非常に多くなっています。パピローマウイルスというイボのウイルスが関係していることが分かっています。二十歳になれば検診を受けてください。

子宮体がんは子宮の奥にできる腺がん(胃がんのようなタイプのがん)で、普通は生理がなくなってからできるがんです。生理不順のある方や五十歳以降で不正出血がある場合は要注意です。見つかりにくいガンですので細胞診だけでなく超音波検査、組織診、子宮ファイバー検査なども行う場合があります。

子宮頸がんの検診と精密検診
子宮がん検診は主に子宮頸がんに対してまず細胞診を行います。

細胞診の結果はベセスタ分類(新しい表示法)で表すことになりました。

今まではクラスⅠ、Ⅱ:特に問題なし、クラスⅢ:異形上皮、クラスⅣ:初期の子宮がん、クラスⅤ:子宮がん
クラスⅢ、Ⅳ、Ⅴの場合は精密検診を受ける必要があると判定していました。

新しいベセスタ分類ではより直接的に検査結果を表します。
NILM   異常なし    (クラスI、II)
ASC-US 意義不明異形上皮 (クラスII~IIIa)
LSIL   軽度異形成   (クラスIIIa)
ASC-H 高度異形成疑い (クラスIIIa~IIIb)
HSIL 中等~上皮内がん (クラスIIIa~IV)
SCC   扁平上皮がん   (クラスV)
AC     腺がん      (クラスV) 
その他

ASC-USの場合はパピローマウイルスの検査が適応になります。
精密検診としては、まず、コルポスコピーを用いたコルポ診を行います。
異常所見があれば、その部分を狙って生検(一部の組織を採ること)し、顕微鏡検査に提出します。病理の先生がどの程度の異常があるか判定します。その結果によって今後どうするかを決めます。

軽度異形成は9割以上正常化するため3ヵ月毎に検査して経過をみます。
最近ではHPVの検査を併用してリスクの程度に応じて方針を決める方法もはじまりました。
高度異形成以上であれば治療を考える必要があります。


 
子宮筋腫、子宮内膜症 と ピル
 子宮筋腫は子宮の良性腫瘍で、生理がある間は徐々に大きくなり、量が多くなったり、痛みがひどくなったりします。子宮内膜症は卵巣、腸や腹膜といった普通、子宮内膜の無い場所に子宮内膜があって、毎月、生理の血が溜まっていく状態です。内出血のようなものですから、当然、痛みがひどくなります。

 診断のあとは治療になりますが、その方の年齢、出産暦、今後の予定などを参考に病状に合わせた治療法を選択します。

薬による治療としては、鎮痛剤、鉄剤などを用いた対症療法、中用量ピルを用いた偽妊娠療法、GnRHa(生理を無くす薬)を用いた偽閉経療法などがあります。
 手術としては病巣だけをとる手術とまとめて全てとる手術があり、手術方法も開腹、腹腔鏡、経膣手術があります。最近では筋腫に対しては子宮動脈の血の流れを止める方法(UAE)や超音波を用いて治療する方法もありますが、まだ一般的ではありません。

 経口避妊薬いわゆるピルを服用すると症状がかるくなります。子宮筋腫や子宮内膜症の卵巣のう胞(チョコレート嚢胞)が無くなることはありません(軽度な子宮内膜症病変は無くなります)が症状はかなり改善されます。子宮筋腫で手術を希望されない方、軽い子宮内膜症の方や子宮内膜症で腹腔鏡手術を受けられ、再発する危険性がある方にはピルがおすすめです。
 子宮内膜症の月経痛に対して保険がきくピル(ルナベル)が発売になりました。かなり高い薬価になっていますが、選択肢がひとつ増えたことになります。
 
乳がん検診
 最近、マンモグラフィー乳がん検診を受けましょうというテレビCMをよく目にします。いままでの乳がん検診は視触診で行っていましたが、あまり有効ではないため、マンモグラフィー併用検診に変更されました。

 乳房撮影には専用の撮影機器が必要ですのでどこでも検診が可能というわけではありません。市町村の乳がん検診は40歳以上の方を対象として2年毎に行われます。対象年齢の方はぜひとも乳がん検診を受けてください。

 30歳代の方や高濃度乳腺の方はマンモグラフィーの他に超音波検査による乳がん検診がお勧めです。月経のあと、自分でさわって少しでも気になるところがあれば検査を受けてください。

 従来、日本人は乳がんになりにくいとされてきました。しかし最近は明らかに増加傾向を示しています。これは少子化のため、授乳の機会が減っているせいでしょう(授乳は乳がんの発生を抑制します)。

 乳がんは早期に見つかれば、小さな手術、乳房温存手術で済む可能性が高くなります。早期発見、検診が重要です。